ロ、リー、タ

我が人生の光。我が腰の炎。

個人的には我が世の光としたいけれど後のことを読むと人生の光かなとかそういう検討ばかりして余暇を過ごしています。我が人生の光。まさしく。

2018年のまとめがこの書き出しでいいのだろうか。多分いい。

今日は読んだ本の話のまとめ。(10冊くらいにする)

もちろんいつものごとく、きちんとネタバレのようなものはしないのでご安心ください。

1.ナボコフ「ロリータ」「青白い炎」「カメラオブスクーラ」「ルージンディフェンス」「ベラへの手紙」

ナボコフ断続的に読んで、対訳して、若島先生や秋草先生のそれと、また過去のわたしと対比させて読み比べている。飽きずに何年もやっていて、この遊びはほぼほぼわたしのライフワークに近い。行間を読む*1、そして本歌取りを続けていくタイプの物を書く人々が大好きだ。その背景の本と文化とを知れば面白みの奥行きが広がるから。そう知覚させてくれたのはナボコフその人である。自分の言語能力と対訳、特に自己対訳の趣味を花開かせたのも彼だ。そういえば最近新訳の刊行が多いのが嬉しい。名を連ねたいとは思わないが。

ロリータは対訳と発見に満ちている。英語、フランス語、それから日本語を読み比べていると案外発見が都度積もっていく。わたしはドロレスの言葉をどうしたら2018年のそれにできるかをよく考えてしまう。

ベラへの手紙、これこそ読むべきであり、後述のミッテランといい恋人に書く手紙の文面に想いを馳せることが多くなった。Vより、または連名のときはV達より、で締めるのが快い。文脈を愛する配偶者から、お互いの共通言語を混ぜたクロスワードを贈られることの喜びは大きかっただろうな。ヴェラ夫人へは羨ましさがあり、バディムにはかわいらしいなと思ってしまう。

2.スリマニ「ヌヌ」

スリマニ氏が講演に来日していたらしく、この身が九州になどなければ年休を取ってでも行きたかった。現代フランス、それから性別と社会参画が背景にあるのである種これが先達になるんだろうなという予感がある。ヌヌはいてほしいと思うが、一瞬だけ映画の「17歳」を思い出した。

3.ミッテラン「アンヌへの手紙」

音読して気持ちのいいラブレター、フランス語のレトリックだなという気持ちがある。最後の手紙の締めを綴れるような人生、パートナーがいたことがある意味羨ましいとすら思っている。

4.吉川英梨「十三階の女」「十三階の神」

ブッ飛んだ女、公安もの、最高の要素。ちょっと露悪的なところがあるので面白いけど最高評価はあげないタイプ。オンナだなあという感想がある。でも黒江律子はわたしの好きな女性の1人であることに変わりがない。黒江が運転が下手っていうの、とってもそれっぽい。あとすごい…な感想がある。黒江律子は「慶應卒の女じゃない」という感想だけは深い。わせじょの友達全員こんなんでもないかわいらしくて自立した子しか知らんけど。

5.濱嘉之「カルマ真仙教事件」

「十三階の神」を読んでた時に実家からリコメンドされた。テーマは近いのでね。(実家とはミステリの基本線が近い、父は濱嘉之氏の著作が好き、母にメシアを勧めたんだが…)

実際濱氏は公安だったらしいですね。これ読んで初めて知った。

6.佐藤亜紀「バルタザールの遍歴」

美しいデカダン。余談だけどわたしはこの本を読んでいて背景がモノクロで浮かぶ。

7.カミュ「ペスト」

パンデミックものが大好きな割に今年初めて読んだ。なぜならこれが指し示しているのはそれそのものではないから。人々がそれぞれ生きている…という感想がある。わたしは仕事をしすぎるとそれをよく忘れてしまうので。原典対訳したい。

8.円城塔「エピローグ」

人生の中には事故があるのでサイエンス・フィクションを意図的に避けてきていた時期がある、それの禊。かわいらしいボーイミーツガールであった。枠っぽく読めばいいのか、と途中で気づいて読み直したりなどもした。紙で読むべき。途中で待って!と言いたくなって置いていかれてまた再会して、の繰り返しという読中感。冒頭の世界の説明のところでわたしは小さい時にママもあなたも本当はロボットなのよ…パパは知らないけどね、と囁かれてリストアするよとおどかされたりなどしていたことを20年ぶりくらいに思い出した。あのときは怖かったな。

9.小川一水「天冥の標 II 救世群」

いいから読みなさい、とリコメンドをもらったけどこれが大当たり。近年だとお風呂に入りながらとか移動しながらとか寝食を忘れたりだとかしながら読んだのってこれと上に上げた十三階シリーズくらいかな。紹介してくれてありがとう。他のやつもよむね……

パンデミックものは大好きですが、私の中でなぜ好きなのか、なんの要素が好きなのかはっきり定まった感じがある。これはSci Fiなので一要素かけるけれども、ドクターの書かないそれが好きなので、ある意味正しい。

あとこれは完全に私の感想ですが、「チカヤのパパは野村マン」。ぜったいそう。だってチカヤかわいいってことはママもかわいいんでしょ…それから思想のフレーバーからちょっと感じました。フィクションに過度の深読みリアルを持ち込まないで。チカヤは都立高校の子だし、なんなら山手線の中にある学校でしょう。新宿以西ではなさそう、とか思っていた。リアルな地名が出てくるお話が大好き。

パンデミックもの、やたらと埼玉が舞台になりがちじゃないですか?わたしのことを呼んでいるのか?(あと住んでいたところが出てきたり過去の志望校とかバイト先の土地が出てきたりなどして忙しかった。都合よく埼玉って言ったけど埼玉にも様々ある。あの県は縦に3つのレイヤーがあるから。)

10.まんがは朱戸アオファンなのでもちろん「リウーを待ちながら」「インハンド」を推していきます。

リウーが連載されていたとき、ちょうど仕事で追い詰められていて、カミュのリウーに思いを馳せたことを今思い出した。あれからいろいろ変わったけれど、できればもう二度と繰り返したくない出来事だった。我々は人々の中でできることをやるしかない。

11.竹本真 猪乙くろ「前略空の上から」

我々の正体がバレてしまった。空を飛ぶことと空港で過ごすことに喜びを覚える我々の。読んで一緒に空港を巡りに行きましょう。

たのしい読書体験と、半ばからいろんな人のおすすめをもらって嗜好を変えた読書ができ始めているので嬉しい。フランス語は今年1級を取得しました。まだまだ対訳もやっていく。来年はすでに積んでいる本を崩すことも、あと積極的に色んな本を読んでいく。

2018年は残すところ、ヨーグルト評をしたい。そんな気持ちです。

*1:もはやバディムおじいちゃんは文字間を読む